やさしい科学の話 岸大武郎SF短編集『錬命術』

錬命術: 岸大武郎SF短編集 (PHPコミックス)

錬命術: 岸大武郎SF短編集 (PHPコミックス)

絶望的なディストピアを描くでもなく、希望的なユートピアを描くでもない
現代と地続きとも思えるハードSFちっくな短編集。
『恐竜大紀行』から変わらない丁寧で表情豊かな生物と
厳しさ苛酷さの中にもやさしさが残るエピソードが良い。

大きく分けて3章に分かれていますがそれぞれ味わい深い。

錬命術

生物科学の進化による社会の変化を描くSF短編(全4話)。技術そのものより技術周りの倫理的政治的経済的問題がメインなので、
現代でも通じる事であり、なかなか答えの出ない事でもある。そのへんもしっかり書いてる。
様々な立場の人物が描かれる2話の水上プラントの話が多角的で好き。

ジュリアの法則

連載作品ジュリアの法則(未読)の単行本未収録話(全2話)。動機編とも言える1話はSFチックな話ですが、
2話は「科学」について問う青春科学モノで実にさわやか。
ちょっと強引な展開も目立ちますが、「楽しさ」を伝えるのが主目的ならまぁいいかな。

大恐竜記

『恐竜大紀行』の続編と言うより追加エピソード2編。大紀行と同様に
恐竜が生物として活き活きと動いてるのが素晴らしいですね。
常に更新されていく恐竜姿を反映して毛が生えてるのが細かいですね。